電子線を照射された物質は二次電子、反射電子、X線等様々な信号を放出します。走査電子顕微鏡(SEM)
は放出された二次電子や反射電子を検出して得られる像により、高倍率の観察が可能な装置です。
汎用型の走査電子顕微鏡とFE-SEM の違い汎用型のSEMには通常、タングステンフィラメントの電子線源が用いられています。一方、FE-SEMには電界放出型電子銃が用いられており、タングステンフィラメントと比べて電子線の径が小さくなっています。
弊社で導入したFE-SEM、日本電子製JSM-7600Fはショットキー電界放出型電子銃を採用し、高い分解能を維持しつつ、安定した大照射電流を容易に得ることができます。これらFE-SEMでは数十万倍までの高倍率観察が可能です。
FE-SEM | 従来型SEM | |
・分解能 | 1.0nm(15kV) | 3.5nm |
・観察倍率 | 25~数十万倍 | 15~1万倍程度 |
・電子銃 | ZrOタングステン | タングステン |
・対物レンズ | セミインレンズ方式 | アウトレンズ方式 |
・像の種類 | 二次電子像 反射電子像 低角度反射電子像 | 二次電子像 反射電子像 |
電子線を照射すると、試料表面から電子が入り込み、最表面から少し内部の情報も像として写し出されます。入り込む深さは電子線の加速電圧によって異なります。例えば、試料がアルミニウムの場合、加速電圧が15kVでは約1.5μm、加速電圧が5kVでは約0.2μm程度電子が入り込むと言われています。
したがって、より最表面の様子を克明に観察するには、加速電圧を低くすることが有効です。
弊社のFE-SEMはジェントルビームモードという入射電子を試料直前で減速し、低加速電圧においても電子ビーム径を小さく保つ機構を備えています。この機構と安定した大照射電流により、0.1kVからの低加速電圧での観察が行えます。
70mm(X)×50mm(Y)×30mm(Z)の試料まで挿入可 (観察位置が端の場合は上記サイズでは観察できない場合があります。)
汎用SEMとFE-SEMでそれぞれ30,000倍での撮影を行いました。FE-SEMでは汎用SEMでは見えづらい微細な繊維構造がはっきりと観察できます。
市販の剃刀の刃先には錆止め目的と思われる油がわずかに付着していました。加速電圧5kVでははっきり見えている表面の付着油が、加速電圧15kVではわかりづらくなっています。薄い付着物の解析等には低い加速電圧での観察が有効になります。
はんだの熱疲労は素子の発熱・冷熱や環境の温度変化の繰り返しよる熱ひずみが原因で発生するもので、非常に微細で複雑な破面になります。低加速電圧で観察することで、微細な凹凸を正確に捉えています。